大阪工業大学は2026年10月8日、光合成細菌の仕組みに着想を得て、光エネルギーの流れを制御する新材料を開発したと発表した。
この新材料は、高分子が形成するらせん状のナノ空間を利用し、低いエネルギーの光を高いエネルギーの光に変換する「フォトンアップコンバージョン(TTA-UC)」と、特殊な偏光を放つ「円偏光発光(CPL)」を同時に実現するものだ。
従来、TTA-UCは酸素の影響を受けやすいという課題があったが、今回の研究では空気中での発光に成功した。
研究成果は、2026年10月2日付で米国化学会の学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載された。
光合成細菌の仕組みを応用した新材料
今回の研究は、大阪工業大学と台湾の国立陽明交通大学による共同研究で行われた。
研究グループが着目したのは、緑色硫黄細菌が持つ光エネルギーの収集・伝達の仕組みだ。
緑色硫黄細菌は、光が届きにくい環境でも効率的に光エネルギーを利用できるよう、色素分子を規則正しく配置した構造を持っている。
研究グループは、この仕組みを参考に、立体規則性の異なる高分子を組み合わせ、光を取り込む分子と発光する分子を配置できるらせん状のナノ空間を構築した。
これにより、分子間のエネルギー移動を制御し、光エネルギーを効率よく受け渡すことが可能になった。
従来の課題だった酸素の影響を克服
今回の研究成果で重要なのは、空気中でフォトンアップコンバージョンを実現した点だ。
フォトンアップコンバージョンは、低いエネルギーの光を、より高いエネルギーの光へ変換する技術である。
しかし、代表的な方式の一つであるTTA-UCでは、酸素によって分子の励起状態が失われ、エネルギー変換が妨げられることが課題となっていた。
今回開発された材料では、らせん状のナノ空間によって分子間のエネルギー移動が高速化され、酸素によってエネルギーが失われる前に、次の分子へ受け渡せるようになった。
その結果、酸素が存在する空気中でもTTA-UCによる発光を観測できた。
さらに、光の振動方向が回転する円偏光発光も同時に実現しており、光のエネルギーと偏光状態の両方を制御できることを示した。
太陽光エネルギー変換や光デバイスへの応用に期待
今回の研究成果は、太陽光を利用するエネルギー変換材料や、偏光を活用した発光・光情報デバイスなどへの応用が期待されている。
特に注目されるのは、分子そのものの構造を変更するだけでなく、分子を配置するナノ空間の設計によって光の性質を制御した点だ。
研究グループによると、今後はナノ空間に組み込む分子の種類や組み合わせを変更することで、さまざまな波長の光を利用・変換する新たな光機能材料の開発につながる可能性がある。
ただし、今回発表されたのは材料研究の成果であり、太陽電池や電子機器などへの実用化が決定したわけではない。今後は用途に応じた性能評価や材料開発が重要になる。
今回の成果は、自然界の光合成の仕組みを材料設計に応用することで、光エネルギーの利用方法を広げる新たな可能性を示した研究といえる。
出典・参考資料
- 学校法人常翔学園「大阪工業大学、光合成細菌をヒントに光エネルギーの流れを制御する新材料を開発」(2026年10月8日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000317.000140284.html - Journal of the American Chemical Society(2026年10月2日オンライン公開)
https://doi.org/10.1021/jacs.6c16205


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